座敷か、と思う。

飲み会の店が座敷だと知った瞬間、楽しみより先に来るものがある人がいる。靴を脱ぐ、あの数秒だ。

この文章は、その数秒が怖い人に向けて書いている。安全靴でも、革靴でもいい。一日中足を覆ったまま働いて、予定を「行きたいかどうか」ではなく「靴を脱ぐかどうか」で決めるようになった人だ。全員に向けて書くつもりはない。この一点で心当たりがない人には、たぶん最後まで退屈な話になる。

和男のアイコン
和男 盛らない健康の話

僕もそうだった。工場で12年間、安全靴を履いて働いていた。夏場、一日中つま先まで覆われた靴の中は、想像どおりだ。仕事が終わってロッカーで靴を脱いだ瞬間、自分でもわかるくらいのニオイがした。

同僚は何も言わない。何も言わないのが、いちばんきつかった。言われれば、少なくとも事実は確定する。言われないから、確かめようがないまま12年が過ぎた。

だから、対策の話から始めるつもりはない。効く方法を探しに来た人には、遠回りに見えると思う。それでも、順番を間違えたまま12年やった人間として、そこは譲れないところだ。何を試すかより先に、何に困っているのかを、ここで一度そろえておきたい。

まず、その数秒の話をさせてほしい。

臭いが問題じゃない。

きついのは、ニオイそのものより、それを一人で抱えている時間のほうだ。

帰宅して玄関で靴を脱いだ瞬間、自分でもわかる、こもった空気。一人暮らしの部屋にそれが広がるのが、いちばんきつかった。誰にも迷惑をかけていないのに、自分の部屋で身構えている。

帰りの電車で、隣の人がさりげなく一歩ずれた気がした日がある。本当のところは分からない。降りる準備だったのかもしれない。分からないから、否定もできない。この確かめられなさが、この悩みの本体だと思う。

恋人の家に上がるとき、「先にトイレ借りていい?」と言って、こっそり足を洗ったこともある。好きな人の家で、隠し事をしている。あの数分は、そういう時間だった。

居酒屋の予約を取るときは、まずテーブル席かどうかを確認するようになった。料理も口コミも、ほとんど見ていない。

玄関に並んだビジネスシューズと安全靴

誰にも相談できなかった。「足が臭い」は笑い話にはなっても、真剣に悩んでいるとは思ってもらえない。笑いに変わった瞬間、相談はもうできなくなる。

病院にも行けなかった。行った方がいいのはわかっていた。でも、受付で言う場面を想像しただけで、足が向かなかった。

ここまでは、たぶん説明しなくても通じる話だと思う。

不潔だと思っていた。

そう思うのは自然だ。毎日ちゃんと洗っているのに臭う。なら、洗い方か、自分の清潔さのほうに問題があるのだろう、と。僕も12年間そう考えて、自分を責めていた。責めている間は、何かをしているような感覚があった。実際には、何も変わっていなかった。

もう一つ信じていたのが、「体質だから、仕方ない」だった。この言葉は便利だ。使った瞬間、それ以上考えなくて済む。ただ、変えられる部分まで一緒に諦めてしまう。

でも、調べていくうちに気づいたことがある。足のニオイの正体は、汗そのものではないそうだ。皮膚にいる菌が、汗や古い角質を分解するときに出すもの。つまり、清潔にしていても、靴の中の湿気と角質という条件が揃えば、誰でも臭う。

足のニオイの仕組み:菌・湿気・角質の3条件が揃うと発生する図解

不潔だからじゃなかった。条件が揃っていたから、だった。

そして条件のほうは、全部ではないにしても、自分で変えられるものが多かった。「仕方ない」で止まる必要は、なかった。

それに気づいた日、少しだけ肩の荷が下りた。解決したからではない。自分のせいじゃなかったと分かったから、先に下りた。順番が逆だったことになる。

ただ、肩の荷が下りても、やることのリストは前と同じままだった。問題は、そこから先だった。

基準を変えた。

朝効くかどうかではなく、夕方まで持つかどうかで測るようにした。

12年で試したものを、正直に並べる。消臭スプレー。足用パウダー。5本指ソックス。靴の2足ローテーション。竹炭インソール。角質ケアパック。足用石鹸を3種類。通販で見つけた消臭グッズ。使った金額は、正直に言うと恥ずかしいくらいだ。途中で数えるのをやめた。

結論から言う。どれも、朝やって夕方には元通りだった。

効果がゼロだったとは言わない。朝の数時間は確かに違ったものもある。悪い商品だったとも思っていない。でも、夕方まで持ったものは一つもなかった。僕が困っていたのは朝ではなく、夕方のロッカーだった。用途と必要が、ずれていた。

安全靴の中は、1日で湿度が相当なところまで上がる。この環境で表面に何を塗っても、8時間後には汗と湿気で流れ落ちている。12時間、長い日は16時間、その中に足を入れたままにする仕事だった。

ここで公的な統計を出せると強いのだろうけれど、僕が確認できた調査はない。数字がないところに数字を作れば、それは僕が嫌ってきた側の話になる。だから、12年分の実例だけで書いている。

これが、僕の言う「ニオイにフタをする対策」の限界だった。

怖さを忘れていた。

外側を全部やり尽くして途方に暮れていたとき、初めて友人にこの悩みを打ち明けた。12年間、誰にも言えなかったことを。笑われる覚悟はしていた。でも友人は、普通に情報をくれただけだった。

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その友人が「こういうのがあるよ」と教えてくれたのが、ある健康食品だった。僕は勝手に「電茶」と呼んでいる。緑茶の粉末、牡蠣殻、ゼオライトなどが入ったカプセルだ。例えるなら、ミネラルのおかゆ。弱っている体にも届きやすい形になっている、というのが僕の理解だ。

足のニオイの薬ではない。メーカーもそういう売り方はしていない。正直、半信半疑だった。信じて始めたわけではなく、他にやることがなかっただけだ。

飲み始めて3ヶ月ほど経った頃、ふと気づいた。帰宅したとき、玄関で靴を脱ぐのが怖くない。正確に言うと、怖いことを忘れていた。

ある日、同僚に「今日、座敷の店でいい?」と聞かれて、気づいたら「いいよ」と答えていた。前なら絶対に理由をつけて断っていた。あの「いいよ」が、自分でも驚くくらい自然だった。

これが電茶のおかげなのか、生活習慣を見直したおかげなのか、たまたまなのか、正直わからない。でも、今は前より気にならなくなった。それだけは事実だ。

飲み始めて、もうすぐ2年になる。今も毎日続けている。1日3粒から、水で飲むだけ。目安は3ヶ月ほど、費用は月1万円ほどだ。パウダー版もあり、350人以上のQ&Aチャットもある。

豆皿に入れた1日分のカプセル3粒と、水を入れたマグカップ
電茶 パウダー 個包装
パウダーを水に溶かしたところ

実際に水で溶かしたところ。

あなたに同じことが起きるかは、わからない。

手に入るものを、改めてまとめます

ひとこと、でいい。

やってほしいことは、一つだけだ。InstagramのDMで、ひとこと送ってほしい。「同じです」だけで伝わる。

送ったあと何が起きるかも書いておく。僕が読む。それだけだ。購入を勧めることはしない。合わないと思ったら、正直にそう言う。返事を急かすこともしないし、送ったからといって何かが始まるわけでもない。

足のニオイの薬ではない。あなたに効くとは約束できない。同じ悩みを持つ人間として、僕がたどり着いた選択肢の一つを、ここに置いておく。

12年間、誰にも言えなかった。言えないまま過ぎた時間のほうが、ニオイよりずっと長かった。座敷を避けた飲み会も、断り続けた温泉も、玄関での数秒も、戻ってこない。取り戻せないと分かっているから、これを書いている。

打ち明けた日に起きたことは、さっき書いたとおりだ。笑われなかった。それだけだった。12年ぶんの覚悟に対して、拍子抜けするくらい何も起きなかった。

だから、最初のひとことの相手は、僕でいい。友人でも、医者でもいい。どれも遠いと感じるなら、ここが一番近いはずだ。

その一言を、送ってくれてもいい。

和男にひとこと送ってみる 「同じです」のひとことだけで伝わります

追伸

これを書くことにしたのは、12年間、誰にも言えなかったからです。言えなかったのは、悩みが小さすぎるからではありません。この話が、笑い話の形でしか世の中に存在していなかったからです。真剣に困っていると認めた瞬間に、自分が惨めになる気がした。だから黙っていました。黙っていた12年のほうが、ニオイよりずっと重かった。

僕がやりたいのは、この話を笑い話から降ろすことです。盛らない。効いたと言い切らない。効かなかったものは、効かなかったとそのまま書く。そうやって正直に書いた記録が一つでも残っていれば、次の人は12年かけずに済むはずです。そのためだけに、この場所を作りました。

あなたが今日、誰にも言えないまま玄関で靴を脱いだのだとしたら。その数秒を知っている人間が、ここに一人います。